桜木町界隈

一昨日(2019年11月13日)の朝、テレビで羽鳥のモーニングショーを流していたら、日本最古のジャズ喫茶として横浜の「ちぐさ」を紹介していた。 懐かしい。50年近く前、中央大学に一年間在籍していた時、桜木町・関内あたりをうろつき、「ちぐさ」や「ダウンビート」に入り浸ってスカした顔をしていたものだった。酒とタバコを嗜んで、小難しい顔をするのが格好良いと思っていたんだねえ。 表通りは賑やかで、キャッシュオンデリバリーのアメリカンバーが有ったり、とんでもなく辛い韓国料理屋や美味い中華の店があった。 裏通りに入るとちょっと物騒で、夜一人でうろつくには怖い雰囲気だった。横浜球場はまだ出来ていなくて公園、そこで殺人があったり、なかなか恐ろしく、でも面白そうな界隈だったのだ。 もちろん中華街は既に有り、夏のアルバイトに黒板屋で働いていた時、社長に聘珍楼に連れて行ってもらったりした。 夏休み中に茅ヶ崎、湘南地方の小学校の黒板を修理製作して、納品する仕事。関東学院のKさん、アーチスト崩れの長髪のにいちゃん、それに私がT黒板店でバイトしたのだった。 横浜で黒板を作り、マツダのオート三輪に黒板を積み込んで納品取付けに行く。まあ大変だったけど社長が気さくで、納品後に海で泳いだり、ご苦労さん会で聘珍楼に連れて行ってくれたのだった。 当時、ジーンズとは言わずGパンと言ったが、まだ出始めできちんとした場所では着ていけないものだった。聘珍楼でもGパンはダメなのだが、代わりのパンツが準備してあって、履き替えて席に着いたのだった。 美味かったという記憶しかないなあ。 関東学院のKさんとは気が合って、桜木町界隈を飲み歩いたものだった。年上の彼は、私をあちこちと紹介するのを楽しんでくれているようだった。結婚式にも出てもらい、彼の結婚式にも出席した。 その後、彼は香港に出て、家具の生産販売会社を設立し、女房子供とは離縁した。疎遠になってしまったが、今はどうしているのだろう。 中央大学の一年生の頃、当時の神田は全学連や革マルなどの学生運動家と機動隊の激突が頻繁にあり、授業も休講になることが重なった。八王子への大学移転が勤労夜間学生を忌避することだから反対する、というのが主な理由。 定時制高校に行きながら働いて貯めた金と、アルバイト・奨学金で通学していた私には休講は不愉快以外の何物でもなかった。 元々、中央大学よりもICUを希望していた私は、年明けに再受験してICUに入学したのだった。決意のきっかけは、学内への機動隊の突入。机や椅子で築いたバリケードを蹴散らして、盾と重装備の機動隊が中庭に突入すると、逃げ惑う学生運動家たちが我々ノンポリの方に逃げて来る。 当然、機動隊もこちらへやって来る。ドドドドっと来られると怖いもんです。 三鷹のICUの学生寮に入った私は、とても満足する四年間の学生生活を過ごしたのだった。桜木町界隈とは縁遠くなったが、若い頃の自分を受け入れてくれた、懐かしく大切な思い出だ。