95.幕末

<原田伊織>
「消された「徳川近代」明治日本の欺瞞」
原田伊織/小学館/\1300
図書館。小野友五郎、小栗上野介など幕府の有能なテクノクラートについて詳述。彼らの敷いた路線に基づいて明治政府は歩んだのに、幕府はすべて悪、明治はすべて善、ということで日本中を惑わせていたとのこと。 確かに、読むとそう思う。教育、PRというのは恐ろしい。記紀にしろ、明治政府にしろ、湾岸戦争でも、卑劣な為政者は歴史書き換えという同じことを繰り返す。
「日本人が知らされてこなかった「江戸」」
原田伊織/SB選書/\800
図書館。歴史災害学がきちんと整備されていたら、このところの災害はもっと被害が少なかったと思う。でもそれでも原発を止めようとしないしない政府では無理か。
江戸の良さを知るには、適した本だ。元和えん武に込められた江戸治世のコンセプトは平和だったのだ。それに基づき様々な政治が行われた。なかなか良いじゃないか。
「三流の維新 一流の江戸」
原田伊織/ダイヤモンド社/\1500
その通り。以前から疑問に思っていた。なぜ幕軍の榎本武陽などが明治政府で活躍するのか、なぜ一年以上も岩倉使節団が海外視察できるのか、なぜ会津藩はあそこまで痛めつけられたのかなどの答えがある。確かに江戸は見直すべきだ。
「明治維新 司馬史観という過ち」
原田伊織・森田健司/悟空出版/\1500
図書館。司馬遼太郎は単なる小説家だ。ところがそれを歴史だと思い込む日本人の多いこと。その上明治政府が、江戸を貶め、明治を高めようとした。私も一時、司馬の小説が面白くて読み漁ったが、ふと気が付くと、何だ主人公はみんな同じ性格じゃないかと気が付いた。 小説なんだよ、もっと歴史を真面目に考えよう。
「日本近代史「明治維新」という嘘」
監修・原田伊織/宝島社/\1000
写真、図版で原田氏の著作を補強した別冊宝島。モノの迫力は有る。宝島ってこんなに誌面作りが上手かったっけ?
「大西郷という虚像」
原田伊織/悟空出版/\1500
維新三部作完結編。確かに大西郷は虚像だと思うが、ちょっと論拠が薄いなあ。この文章では西郷の姿が活き活きとは出てこない。なぜ偏狭で協調性のない西郷が、慕われ持ち上げられたのか、そこを分からせてくれないと困る。
その上、西南の役については書かないし、根拠の薄い断定、推量が散見される。随筆じゃないんだから。売れてから書き殴りになったのか。
「明治維新という過ち」
原田伊織/毎日ワンズ/\1500
なるほど薩長の勝者の理屈に惑わされず、事実をきちんと見なくてはならないと思う。司馬遼太郎の責任は重いし、歴史と小説の区別のつかない馬鹿な日本人の多いことは嘆かわしい。 私は一時司馬モノに魅かれたが、どの主人公も司馬好みの同じキャラクターだと気づき、司馬モノから離れた。それにしても筆者の思いは分かるが、論証無しに感情的な決めつけが多いのには辟易する。もう少し冷静に論証すれば賛同者も増えるだろうになあ。
「官賊と幕臣たち」
原田伊織/毎日ワンズ/\1400
列強の日本侵略を防いだのは徳川テクノクラートだったという。なるほど納得だ。鎖国の実態、ペリー、ハリス、グラバーの正体、イギリス・アメリカの思惑など、頷けることが多い。特に日米通貨戦争については驚くばかり。 今までの歴史は何だったのか。また日本占領の先兵としての宣教師、日本人の海外への人身売買に対する不勉強さは反省点だ。

<幕末>
「お金で読み解く明治維新」
大村大次郎/ビジネス社/\1300
図書館。視点は良いのだが、いまいち事実、数字、論理性、文章力に欠けるので信頼が置けない。幕府も諸藩も経済力が無かったので、借金、専売、密貿易、贋金作り(万延二分金・天保通宝)に励んだのは分かる。西洋の市民革命は、市民が圧政に抗った革命であり、明治維新は特権階級である武士同志が争ったという違い。
明治維新で最も損をしたのは既得権益を失った武士階級と大商人で、得をしたのは土地を入手できた農民。そうかも知れない。
「明治の技術官僚 近代日本をつくった長州五傑」
柏原宏紀/中公新書/\880
図書館。長州ファイブと言われ、英国へ密航したことさえ知らなかった。伊東博文、井上薫が政治家となり、工学の父山尾庸三、鉄道の井上勝、造幣の遠藤謹介。たしかに技術官僚としての活躍はあったのだろう。
本としての出来は面白くない。人の説を使って年表を読むみたいだし、肝心の技術官僚三人については中身が薄い。
「くつがえされた幕末維新史」
浮世博史/さくら舎/\1800
図書館。既に言われている事ばかりで、何も目新しいものではない。
小説やドラマは歴史ではなく、想像の産物である。学者は根拠を明示して自説を述べる、という当たり前のことが疎かにされ過ぎている。書き残された歴史は勝者の記録であり、敗者を悪く書く。当たり前のことだ。左右、黒白をきちんと見分けて自分の頭を磨きたい。
長ったらしい口語体の文章が煩わしい。
「江戸の情報屋」
吉原健一郎/NHKブックス/\650
図書館。通信社のような動きをした藤岡屋由蔵の日記を紹介。新聞通信業の祖というが、瓦版をどう捉えているのか。読んでいて面白みは無いが、歴史として知る必要はある。外神田の御成道、秋葉原駅の西側に店を構えていたとは知らなんだ。
「脱藩大名の戊辰戦争 上総請西藩主・林忠崇の生涯」
中村彰彦/中公新書/\680
図書館。先日テレビで見て興味を持った。こんな大名がいたのか、しかも千葉に。二十歳で徳川に準ずるというのも奇矯だが、分からないでもない。写真を見ると、偉丈夫だが優しい顔立ち。 文武に秀で、辞世「真心のあるかなきかはほふり出す腹の血しをの色にこそ知れ」は凄まじい。教養ある古人たちは歌が読むるのだなあ。私は古文漢文は読めないし、歌も作れない野蛮人だ。
家康の祖をもてなした「献兎賜盃」、それを表現した家紋「丸の内三頭左巴に下一文字」は味わい深い。
「プレジデント臨時増刊 司馬遼太郎がゆく」
-/プレジデント社/\1000
「峠」など新聞小説の頃から読んでいて、一時ワクワクと胸躍らせて読んでいた。有る時ふと、どの主人公も同じ性格、同じパターンの活躍がおかしいと思い始めた。 そしてこれは小説であり、筆者が好きなことを書いているのだと気付いて熱が冷めた。
世の中は気付いていないのか、気付きたくないのか、国民文学とか大歴史家とか持て囃しているが、単なる小説家だと思う。歴史を捻じ曲げているのではないか。
「天璋院篤姫と幕末動乱」
-/新人物往来社/\1800
鹿児島にも行って島津藩に興味を持ったし、篤姫もと思ったが、面白くなかった。別冊歴史読本は独特の変な文章が多い。篤姫の写真は興ざめ、あの傲慢そうな顔つきはいただけない。

<会津>
「ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書」
石光真人/中公新書/\700
図書館。1971年の初版。会津人柴五郎が苦難の少年時代を乗り越えて、幾多の人の引き立てを受けながら陸軍大将になった。その前半生を記している。長州軍のおぞましくなる所業には、人間の闇を見るが、中に人の優しさがあるとホッとする。
「会津藩はなぜ「朝敵」か」
星亮一/ワニ文庫/\648
素直になぜかを知りたかった。この本によると、薩摩藩による偽の討幕の密勅、徳川慶喜の保身無能、フランス公使の関与と人身御供としての会津藩、などが読み取れる。それにしても史実と推測の区別がつかない著者の知能には参る。 これでよく本を出せるものだ。白虎隊士だった山川健次郎が、長州藩参謀の奥平謙輔に援助されて東大総長になったという話は、当時の敵味方の関係が伺われて興味深い。

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