<東直己>

「猫は忘れない」 東直己/ハヤカワ文庫/\760	シリーズ第１２作。面白いんだけれど、今一歩整合性が無いので、没入するほどでない。猫の対応のずれ、性別が最後まで分からないことなど、説明がいまいち。
「半端者」 東直己/ハヤカワ文庫/\780	学生時代の「俺」を描写。シリーズをこれだけ書いた後の前日譚にしてはお粗末。話しを広げ過ぎて収拾がつかなくなり、中途半端になる。伏線が張れないので、結末を偶然に頼らざるを得なくなる。作家としての禁じ手です。 このシリーズを読んでいると、毎日酒を飲むことに拒否感が無くなって困る。
「旧友は春に帰る」 東直己/ハヤカワ文庫/\940	これは名作だよ。プロットも文章も過不足なく組み立てられていて、それぞれのキャラクターも踊りだした。華さんの挙措は可愛いし、アンジェラの美しさと強さは好ましい。モンローの老いと人生は身につまされるし、引きこもりの介護士の石崎の誠意、やくざの桐原・相田の義理と人情は心地良い。タクシーの運転手の愛嬌、ラストの新井の独白も心に沁みる。これを展開すれば、素晴らしい映画が出来るんじゃないか。
「探偵、暁に走る」 東直己/ハヤカワ文庫/\920	地下鉄の中での縁で知り合った怪異なイラストレーター近藤が殺され、俺は犯人を追及する。単なる殺人から、俺おれ詐欺、裏金融と広がる展開も面白い。自衛隊出身のゲイ、アンジェラや愛人華さんのキャラクターが上手く踊りだして楽しい。
「ライト・グッドバイ」 東直己/ハヤカワ文庫/\740	女子高生行方不明事件の容疑者と親友になり、真相を暴こうとした主人公の葛藤が面白い。容疑者やアンジェラの話をもっと膨らませると、もっと味が出ると思うのだがなあ。九相図をこんなところで出されてもなあ。
「駆けてきた少女」 東直己/ハヤカワ文庫/\920	腹を刺された主人公が犯人を追いかけていると、そこに現れてきたのは北海道の警察・マスコミ・教育界を牛耳る腐敗した人脈。面白いのだけれど、もう少し無駄なプロットを整理すると文章に質創刊と爽快感が出てくるのになあ。
「探偵は吹雪の果てに」 東直己/ハヤカワ文庫/\820	袋叩きにされて入院すると、そこには６０過ぎたかつての恋人が。妊娠の告知をした前作から突如、子供は中学生になり、春子と離婚して、というのは唐突ではないかい。
「探偵はひとりぼっち」 東直己/ハヤカワ文庫/\940	みんなに愛されていたオカマのマサコちゃんが殺され、許せない「俺」は孤軍奮闘、調査を続けるが、怪しげな男や事件が絡まって、というストーリー。面白いけれど、登場人物とプロットの手を広げ過ぎて、とっ散らかってしまった。ヒロイン春子をもっと描けば良いのに。最後に妊娠したことを告げたので、次作が楽しみ。
「消えた少年」 東直己/ハヤカワ文庫/\820	終盤のグロさと簡素過ぎる結末は玉にきずだが、人物描写もストーリーも面白い。何よりヒロインと俺の関係が微笑ましく楽しい。
「向う端にすわった男」 東直己/ハヤカワ文庫/\700	短編５話。短編はあまり面白くない。
「バーにかかってきた電話」 東直己/ハヤカワ文庫/\700	映画「探偵はバーにいる」の原作。
「探偵はバーにいる」 東直己/ハヤカワ文庫/\760	映画を見て読みました。なかなか面白い。もう少し削って分かりやすくすればヒット間違いなしなのに。今まで知らなかった。

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